まとめ
そして『必然』(生命の必要性を満たす)の法則に従う労働が、私的領域を飛び出して保持するだけの孤立化した個人の集まり=大衆社会が到来する」というのだ。
アーレントのいう「行動」は社会科学にとって重要な統計学が拠って立つ人間の捉え方であり、マスとしての人間を捉えるからこそ可能な分析手法だと主張する。つまり、多様な人間の同一の行動をとるものとして集合化してしまう考え方であり、「多様性」をその前提とする「活動」とは対立するものと言えるのだ。現代社会の中の1つの政治的潮流を強めるために、アーレントが歴史の中から摘出した「活動」的空間の創出がますます必要なことであり、それが民主主義のバージョンアップにとっても必要であると著者は主張する。
アーレントが『人間の条件』で分析しているのは、人間の主要な活動力である「労働・仕事・活動」である。労働は「人間の肉体の生物学的過程に対応する活動力」であって、仕事は「人間存在の非自然性に対応する活動力」であり、活動は「物あるいは事柄の介入なしに直接人と人との間で行われる唯一の活動力であり、多数性という人間の条件、すなわち、地球上に生き世界に住むのが一人の人間manではなく、多数のmenであるという事実に対応している」と説明している。